研究目的は、先行研究についての説明の後に書きます。
先行研究についての説明と研究目的とは、合わせて1つのものであると考えてください。
先行研究がしっかりと書けていれば、研究目的は苦労せずに書けると思います。
しかし、研究目的を書くときにも、いくつか注意すべき点があります。
本記事では、卒論・研究論文の「研究目的」の書き方について、例を挙げながら解説します!
本記事は、理系の卒論・研究論文の書き方の解説です。文系の方は、別の記事をご参照ください。
- 本職…技術文書の執筆・添削
- 理系出身
- 塾講師のアルバイト経験有り
卒論・研究論文(理系)における研究目的にの役割は?具体的に何を書けば良いの?
論文における研究目的は、「この論文では、何を・どこまで明らかにするのか」を読み手に明示する役割を果たします。
つまり、論文の研究目的とは、論文のゴールラインのようなものです。
卒論・研究論文(理系)における「研究目的」は、研究着手時に設定する「研究目的」まで到達していなくてもOK!
先行研論文で設定する「研究目的」と、研究着手時に設定する「研究目的」は別物です。
したがって、論文で設定する「研究目的」は、研究着手時に設定する「研究目的」まで到達していなくても問題ありません。
どういうことなのか、以下で詳しく説明します。
研究着手時に設定する「研究目的」とは、「研究の最終目標」であることが多いです。
「研究の最終目標」までの道のりにも、小さな目標が沢山あります。
この小さな目標の中で、先行研究よりも新規性が主張できるものがあれば、それが「論文での目標」になります。
論文を出すときには、必ずしも、研究の最終目標に到達している必要はありません。
最終目標まで到達していなくても、「今までより少し進歩したこと」が成果として得られた時点で、論文は出せます。
最終目的まで到達していなくとも、先行研究と差別化できた時点で、論文の研究目的とすることができます。
卒論・研究論文(理系)|研究目的を書くときのコツと注意点!
研究目的を書くときの注意点① 先行研究の紹介に繋がるように書く
以前の記事で、「先行研究」の書き方についてご紹介しました。
研究目的は、先行研究の後に書きます。
したがって、先行研究の紹介で書いたことと上手く繋がるように書く必要があります。
論文では、研究背景と研究目的で、1つのストーリーが成立するように書きます。
先行研究の一番最後には、「先行研究での課題」を書くとご説明しました。
さらに、先行研究での課題には、「自身の研究では成果が得られたが、先行研究では成果が得られていない点を記載する」とご説明しました。
研究目的は、「(先行研究で挙げた課題)を解決すること」とすれば良いです。
例えば、自身の研究を「自撮り棒についての研究」と想定してみます。
今回、「自身の研究」として想定するのはこれ!
自身の研究:スマホ用自撮り棒
先行研究:スマホ用三脚
お馴染みの便利グッズ!
スマホ用自撮り棒の良いところ
①遠くから撮影できる!
②好きなタイミングで撮影できる!
③好きな角度・構図で撮影できる!
先行研究である「スマホ用三脚」の課題として、先行研究に以下のように記載したとします。
例文
コメント
しかし、XXらの三脚には、以下のような課題があった。
第一の課題は、持ち運びが不便という課題である。三脚はスマートフォンを把持しながら自立する必要があるため、ある程度の大きさと質量が必要となる。そのため、持ち運び可能でコンパクトなスマートフォンの利点を活かすことができない。
第二の課題は、セルフタイマー機能を使用しないと撮影が行えないため、手軽に撮影することができないという課題である。XXらの三脚を使用した場合、ユーザは、スマートフォンを操作しセルフタイマーを設定した後に、撮影を希望する地点まで移動する必要がある。そのため、撮影を希望する地点に到達した後にシャッターが切れるまで待ち時間が発生する。また、撮影希望地点へ到達する前にシャッターが切られ、ユーザの好みに合った構図で撮影ができない場合もある。また、再撮影を行いたい場合も、ユーザはまたスマートフォンが設置されている場所まで移動する必要があり、手軽に撮影を行うことが難しい。
自身の研究で改良した点を列挙します。
前述したように、改良できていない点については書かないほうが良いです。
課題を複数列挙するときは「第一の課題は、…。第二の課題は、…。」と分けて記載するようにすると読みやすいです。
先行研究で、課題を2つ挙げています。
- 持ち運びが不便
- 手軽に撮影できない
研究目的は、この2点の課題を解決すること、とすれば良いので、例えば以下のように記載することができます。
本研究では、持ち運びが容易であり、かつ撮影時のユーザへの負担が軽減する撮影補助装置について検討することを目的とする。
研究目的を書くときの注意点② 先行研究で挙げた課題は、すべて研究目的に含める
先行研究の課題として挙げたものは、すべて研究目的に含める必要があります。
例えば、先ほどの例では、課題を2つ挙げました。この場合は、両方の課題を研究目的に含める必要があります。
本研究では、持ち運びが容易な撮影補助装置について検討することを目的とする。
上記のように、1つの課題のみを研究目的とすることはできません。
逆に、先行研究の課題として、研究目的と関係のない事は書くべきではない、といえます。
まとめ:【例文付】卒論・研究論文(理系)の書き方 ②研究目的を書くコツ
今までご説明した通り、研究目的の書き方は先行研究の書き方に依存します。
先行研究の書き方がしっかりしていれば、研究目的はさほど苦労せず書けるかと思います。
今まで色々と説明してきましたが、卒論・研究論文を書けるようになる一番のコツは、自身の研究の技術分野の論文を沢山読むことです。
多くの論文を読めば、自ずと書き方が分かってきます。
また、自身の研究のバックグラウンドについての知識が増えるので、研究の質も上がります。
論文の執筆は大変ですが、一緒に頑張りましょう!
おまけ:論文執筆前に読んでおきたい、おすすめ本3選
例文が全て技術的な分野のものであるため、紹介されているテクニックをどう自身の論文に活かすかを想像し易いです!
原文・改善例の両方が掲載されているため、自分の文章をどのように改善したら良いか理解し易いです!
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分かりやすい論文を書くためには、正しい接続詞の知識は必須です!
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\接続詞については、当ブログでも解説していますので、ぜひご覧ください/