この記事は、接続詞の用法の解説記事です。
今回解説する接続詞は、順接の接続詞である「だから」「したがって」「そのため」の3つです。
この記事では、以下のようなお悩みを解決します。
この記事で解決できるお悩み
- だから/したがって/そのため のそれぞれの意味の違いを知りたい!
- だから/したがって/そのため を使用したときの効果を知りたい!
- だから/したがって/そのため の使い分けについて知りたい!
- だから/したがって/そのため を利用するときの注意点を知りたい!
- 目上の人に対して使用するのが失礼なのか、フォーマルな場で用いても良い表現なのかを知りたい!
「だから」「したがって」「そのため」の意味・使い方は?例文付きで解説
「だから(ですから)」の使い方は?
「だから」は、断定の助詞「だ」に、接続助詞の「から」を連結した接続詞です。
「だから」を丁寧に表現すると、「ですから」になります。
「ですから」も「だから」と同じ意味を持ちます。
「だから」を使用した例文
- 彼女は皆に親切だ。だから人気がある。
- 昨日は沢山寝た。だから、今日は眠くならないと思う。
- 今取り組んでいるプロジェクトの納期は一週間後です。ですから、今気を緩めるわけにはいかないのです。
「だから」の効果は?
効果その①
例えば、先ほどご紹介した1番目の例文を検討してみます。
彼女は皆に親切だ。だから人気がある。
この例文は「彼女はみんなに親切」なのと「人気がある」のには論理的根拠がありません。
彼女が人気な理由は容姿にあるかもしれませんし、会話が上手だからかも知れません。
彼女が皆に親切にした結果、人気が出たと言える根拠は無いのです。
しかし、こうした場合でも、「だから」を使うことで、文章として成立させることができます。
「だから」は先行文と後続文の橋渡しをしてくれます。
「だから」を使用することで、先行文と後続文に論理の飛躍があっても、読み手は推論を働かせ、論理を補うことで文章を繋げます。
先程の例文では、読み手は以下のような流れで推論します。
先程の3つ目の例文で考えると、より分かりやすいと思います。
今取り組んでいるプロジェクトの納期は一週間後です。ですから、今気を緩めるわけにはいかないのです。
この文章では、読み手は以下のように推論をします。
「だから」は、このように、論理が飛躍した先行文と後続文を繋ぐ橋渡しの役割を果たします。
「だから」は、論理が飛躍した先行文と後続文を繋ぐ橋渡しとして機能します。
「したがって(したがいまして、よって)」の使い方は?
「論理的に行き着く」ことを示す必要があるので、先行文は理由/原因を表し、後続文は結果を表す必要があります。
また、「したがって」は文語的な表現です。
口語で用いるときには、「したがいまして」を使用することを推奨します。
「したがって」の例文
- 当社の営業時間は10:00〜18:00です。したがいまして、18:00以降にお越しいただいてもご案内することができませんので、ご了承ください。
- 来月発売されるカメラは、従来品よりも画質は上がるものの、従来品の2倍の重さがある。したがって、手軽に持ち運べるカメラが欲しいのであれば、従来品の購入を勧める。
- 四角形ABCDは、4辺の長さが全て等しく、また、4つの角の大きさが全て等しい。したがって、四角形ABCDは正方形である。
「したがって」の効果は?
先ほどご紹介した1番目の例文を検討してみます。
当社の営業時間は10:00〜18:00です。したがいまして、18:00以降にお越しいただいてもご案内することができませんので、ご了承ください。
この文章ですが、「したがいまして」を抜くとどうなるでしょうか。
当社の営業時間は10:00〜18:00です。18:00以降にお越しいただいてもご案内することができませんので、ご了承ください。
「したがいまして」が無いと、前後の文に因果関係があることが弱まったような印象を受けるのではないでしょうか。
どういうことかと言うと、先行文(営業時間)と後続文(ご案内できない時間)には、強い因果関係があるのですが、「したがって」が無いと一見因果関係が無いようにも見えてしまうのです。
「したがって」を入れることで、先行文と後続文に因果関係があることが明確になります。
「そのため」の使い方は?
「そのため」も「したがって」同様に文語的な表現です。
口語で用いるときには、「そういうわけで」を用いることを推奨します。
「そのため」の例文
- 今月は既に40時間も残業しているが、とても納期に間に合いそうにない。そのため、先方に納期をずらせないか確認する。
- 娘の保育園は送迎バスが無いため、私が送り迎えをしている。そのため、会社では時短勤務をさせてもらっている。
- 最近は専ら在宅で仕事をしている。そのため、電気使用量が例年よりも増加した。
「そのため」の効果は?
前述したように、「そのため」は、先行文を受けて後続文が導かれることを示す接続詞です。
先行文の理由・原因があったからこそ、後続文の結果になった、ということを明示することができます。
つまり、「そのため」には、先行文(理由)を強調する効果があります。
「だから」「したがって」「そのため」の違いは?
「だから」「したがって」「そのため」は、全て順接の接続詞です。
では、それぞれの語には、どのような違いがあるのでしょうか。
「だから」と「そのため」「したがって」の違い
前述したように、「だから」は先行文と後続文が論理的に飛躍していたとしても橋渡しをする役割を果たします。
そのため、後続文が主観的・独断的である場合に用いられることが多いです。
一方で、「そのため」「したがって」は、先行文と後続文が客観的に見ても因果関係があるときに用いられます。
「そのため」と「したがって」の違い
「したがって」と「そのため」は、置き換えても文章が成立します。
何が違うかというと、先行文(理由)が強調されるのか、後続文(結果)が強調されるのかという点が相違します。
「したがって」は、”〇〇した結果、こうなった”というようなニュアンスを持ちます。後続文である、こうなったが強調されます。
一方で、「そのため」は、”〇〇したことにより、こうなった”というようなニュアンスを持ちます。先行文である、〇〇したことによりが強調されます。
- 当社の営業時間は10:00〜18:00です。したがいまして、18:00以降にお越しいただいてもご案内することができませんので、ご了承ください。
- 当社の営業時間は10:00〜18:00です。そのため、18:00以降にお越しいただいてもご案内することができませんので、ご了承ください。
例えば、上記の例文で「そのため」と「したがって」の違いについて検討します。
①の例文では、「したがって」が使用されているため、「18:00以降は案内できない」という結果が強調されています。
②の例文では、「そのため」が使用されているため、「営業時間が10:00〜18:00である」という理由が強調されています。
書き手が、理由と結果のどちらを強調したいのかによって、「したがって」と「そのため」は使い分けられています。
「だから」「したがって」「そのため」はこうして使い分ける!
「だから」「そのため」「したがって」の使い分け方
「だから」「したがって」「そのため」を使い分けるためのフローを以下に示します。
書こうとしている後続文が、先行文から客観的に導くことができるかどうかを考えます。
後続文が「主観的・独断的」なニュアンスを含む場合、「だから」を使用します。
そうでない場合は、STEP2へ進みます。
先行文(理由)の方を強調したい場合は「そのため」を使用します。
後続文(結果)の方を強調したい場合は「したがって」を使用します。
「だから」「したがって」「そのため」を使用するときの注意点
「だから」「したがって」「そのため」ですが、これらの接続詞は目上の人にも使用できます。
ただし、「だから」を使用する場合には「ですから」に言い換えた方が良いでしょう。
それ以外に、「だから」「したがって」「そのため」を使用するときに注意すべき点を以下に記します。
注意点:論理的に説明したい場面では「だから」を使用しない
論文等、論理的に説明したい場合には、主観的な表現である「だから」は使用しないのが無難です。
「だから」を使用すると、書き手の主観・独断を多く含む文章であると解釈されます。
「主観的な文章ではなく、論理的な文章である」と読み手に示すためにも、「だから」は使用しないことを推奨します。
「したがって」もしくは「そのため」のどちらかで代用しましょう。
まとめ:だから/したがって/そのため|意味と効果の違い、使い分けについて
最後に、今までご説明したことの要点をまとめます。
- 「だから」は、先行文と後続文が「原因−結果」の関係にあることを明示したいときに使用する。
- 「したがって」は、先行文から後続文へ論理的に行き着くことを示したいときに使用する。
- 「そのため」は、先行文を受けて後続文が導かれることを示したいときに使用する。
- 後続文に主観・独断が含まれる場合には「だから」を使用する。客観的な場合は「そのため」もしくは「したがって」を使用する。
- 先行文(理由)を強調したい場合には「そのため」を使用する。後続文(結果)を強調したい場合には「したがって」を使用する。
如何でしたか。
だから/そのため/したがって の使い分けは細かい話ですが、接続詞をマスターすると文章のレベルを格段に上げることができます。
この記事が、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
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- 山田忠雄ほか(2009)「新明解国語辞典(第6版)」三省堂