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言う/云う/いう|表記の違いで意味は変わる?それぞれの使い分けについて解説

この記事は、動詞の用法の解説記事です。

今回解説する動詞は、「言う/云う/いう」です。

「言う」「云う」の意味の違いや、漢字表記と平仮名表記の使い分けについて、例文を紹介しながら解説します!

この記事で解決できるお悩み

  1. 言う/云う/いう のそれぞれの意味の違いを知りたい!
  2. 言う/云う/いう の使い分けについて知りたい!
  3. いう をひらがな表記するべき場合を知りたい!
目次

「言う/云う」の意味とその違いは?

「言う」の使い方は?

実際に自分(他人)の口を通して発音した(発音された)行為に対して使用します。

国語辞典では、「言う」の意味は次のように定義されています。

思ったこと・感じたことや他に伝えたいことなどを言葉で表す。

新明解国語辞典(第六版)より

「言う」は、口を通して発音した(発音された)行為に対して使用します。

自分が口にした言葉であっても、他人が口にした言葉であっても、「言う」と表記します。

「言う」の例文

  1. 私は「今日も天気が良いですね」と言った
  2. 彼女が好きだと言っていた花を買う。
  3. 自分の思いをはっきりと言う彼に感銘を受けた。

「云う」の使い方は?

日本国語大事典や大漢語林では、「云う」は「他人の言葉を引用して言葉にするとき」に使用するとされています。

曰く(いわく)」と同じ様な意味を持ちます。

「曰く」は「云く」とも表記されるので、漢字を考えれば同じ意味を持つことは納得できます。

「言う」の例文

  1. 彼が云うには、明日は晴れるらしい。
  2. 今朝の新聞によると、明日は記録的な大雨になると云う
  3. 母が云うには、私は昔から人見知りが激しかったそうだ。

しかしながら、「云う」は常用漢字ではありません

したがって、新聞などの公用文※では「云う」は全て「言う」で統一されます。

※公用文…国家・公共団体などが出す、文書や法令などの文章のこと。

そのため、新明解国語辞典などでは、「言う/云う」は一語として掲載されており、区別されていません

「言う/云う」の違い、使い分けについて

「言う/云う」の違いは?

「言う」は口を通して発音した(された)もの全般に使用します。「云う」は他人の言葉を引用して言葉にするときに使用します。

前述したとおり、「言う」は「口を通して発音した(発音された)もの全般」に使用します。

一方で、「云う」は「他人が言ったことを引用して言葉にするとき」に使用します。

ただし、先程も述べたとおり、「云う」は常用漢字ではないため、最近の文書では「言う」と表記されるのが一般的です。

したがって、下図に示すように、「云う」は「言う」に包含されます。

「言う」と「云う」の関係図

本来「云う」と表記されるべきであっても、近年の文章であれば「言う」と表記されるので注意しましょう。

「言う/云う」はどうやって使い分ける?

自論ですが、全て「言う」で統一してしまって良いと思います。

前述したとおり、「云う」は常用漢字ではありません。むやみに使用するのは避けた方が良いと個人的に思います。

したがって、「言う」も「云う」も、全て「言う」で統一するのが良いというのが自論です。

しかし、「言う/云う」の使い分けは不要ですが、「言う/いう」は使い分けをするべきだと考えます。

以下の章で、その理由について説明します。

「言う/いう」の違い・使い分けについて

補助動詞としての「いう」の意味

「いう」は、補助動詞としても機能します。

補助動詞の「いう」は、同格強調の意味、話題に取り上げる意味、必ずしもそうではないという意味などを持ち、直前の文節の意味を補う役割を果たします。

補助動詞について

皆さんは、「補助動詞(形式動詞ともいう)」をご存知でしょうか。

”補助動詞”とは

補助動詞とは、本来の言葉の意味が薄まり、ほかの語の後に続いて、その直前の文節の意味を補う役割を果たす動詞のことです。

”本来の言葉の意味が薄まる”とは

たとえば、「試してみる」という言葉。

この「みる」は、「視覚に入れる」という本来の言葉の意味は持っていませんよね。

「試してみる」や「教えてください」は、本来の動詞そのものの意味が薄まった”補助動詞”です。

「いう」は、まさにこの補助動詞にあたります。

「いう」が補助動詞として使用されるのは、例えば、以下のようなときです。

以下の文章で使用される「いう」は、どれも「口を通して発音した(発音された)もの」ではありませんよね。

「いう」の意味と例文

  1. あなたは、神という存在を信じますか。
  2. 医者という職業の責任は重い。
  3. あらかじめ知らされていたからといって、どうするわけでもない。
  4. このシステムは高性能であるといえる
  5. 箱根といえば、昔家族である温泉に行ったことがある。

「言う/いう」の違い、使い分けについて

補助動詞は仮名で表記するというルールがあります。

令和3年 新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)”によると、補助的動詞を使用するときには、仮名で表記するように規定されています※。

※13頁 ア参照

ですが、これはあくまで公用文のルールです。

辞書には、全て「言う/云う」の意味として記載されていますし、「ひらがなで表記するべきである」といったような注意書きもありません。

つまり、補助動詞として使用したいときに漢字で表記しても誤りではありません

ただ、個人的には公用文のルールに合わせるべきであると思います。

そもそも、なぜ公用文のルールが定められているのでしょうか?

令和3年 新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)”には、以下のように記されています。

公用文は、読み手に過不足なく理解され、また、信頼され、それによって必要な行動を起こすきっかけとされるべきである。

令和3年 新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)より

要するに、公用文のルールとは、読み手に伝わりやすい文章を書くためのルールであるということです。

伝わりやすい文章を書くことは、公用文に関わる公務員や士業に携わる者に限られず、誰もが目指すべきことです。

したがって、表記についての厳密な規定はなくとも、公用文のルールに従うのが良いのではないか、というのが自論です。

まとめ:「言う/云う/いう」の違いは?使い分けについて解説

最後に、今までご説明したことをまとめます。

まとめ:「言う/云う/いう」の意味・使い方・違い

  1. 「言う」は、実際に言葉を口に出すときに使う。
  2. 「云う」は、他人の言ったことを引用して言葉にするときに使う。
  3. 「云う」は、常用漢字ではないため、「言う」と表記される。
  4. 補助動詞として「いう」を使う場合、「いう」と表記するのが良い。ただし、「言う」と表記しても間違いではない
  5. 公用文のルールでは、”実際に言葉を口に出す”という意味で使うときは「言う」、それ以外の場合は「いう」を使用することが推奨されている。

如何でしたか。

この記事が、少しでも皆さまの理解の助けになれば幸いです。

参考文献

  1. 文化審議会国語分科会(2021)「新しい「公用文作成の要領」に向けて(報告)」文化庁
  2. 小田順子(2021)「令和時代の公用文 書き方のルール」学陽書房
  3. 山田忠雄ほか(2009)「新明解国語辞典(第6版)」三省堂
  4. 菊池捷男”公用文の書き方 5 “動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書く”と覚えるべし”マイベストプロ、2014年9月6日 公開(最終閲覧日:2021/12/13)
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