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小さい頃から、メッセージボトルを海に流すのが夢でした。しかし、環境汚染は良くないので、代わりにブログを始めてみました。

「させていただく」の多用は誤用の可能性有!言い換え表現は?【敬語】

この記事は、敬語の用法についての解説記事です。

今回ご紹介するのは、「させていただく」の正しい使い方についてです。

この記事で解決できるお悩み

  • 「させていただく」の正しい使い方を知りたい!
  • 「させていただく」の誤用について知りたい!
  • 「させていただく」を言い換えた表現を知りたい!
  • 「させていただく」を使用するときの注意点を知りたい!

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目次

敬語「させていただく」の正しい使い方を知って誤用を防ごう!

「させていただく」を使用するための条件

「させていただく」は、どのようなシーンで使用することができるのでしょうか?

文化庁の出している”敬語の指針”には、「させていただく」を使用するには以下の2つの条件を満たすことが必要であると記載されています。

「させていただく」を使用する場合の条件 2つ

  • 自分がすることを、相手の許可を得て行う場合
  • そのことによって、自分が恩恵を受けるという事実・気持ちがある場合

文化審議会答申”敬語の指針”より)

この2つの条件をどれだけ満たすかによって、「させていただく」を使用するのが適切であるのか決まります。

「させていただく」の正しい使い方

次に、「させていただく」を使用した例文をあげてみます。

「させていただく」を使用した例文

  1. 本日の会合に小林さんをご招待させていただきたく存じます。
  2. そのパーティーには、私も参加させていただきました。
  3. 取材させていただいても宜しいでしょうか。

全て「相手に許可をもらい」「そのことで恩恵を受ける」場合に使用されていますよね。

このように、先程挙げた2つの条件を十分に満たす場合には「させていただく」を使用するのが一番適切です。

敬語「させていただく」の誤用

次に、「させていただく」を使用するのがあまり適切ではない場合を紹介します。

「させていただく」を使用するのが適切でない場合の例文

  1. 私は、大学で心理学を専攻させていただきました。
  2. メールを送信させていただきました。
  3. 資料は、後ほど拝見させていただきます。

解説

まず、1つ目の例文について検討します。

この文で「させていただく」を使用すると、「大学に許可をもらい」「そのことで大学に対して恩恵を感じていること」を強調する文章になります。

この文章の内容から推測するに、書き手は「大学に恩恵を感じている」ことを強調して伝えたいわけではなく、「心理学を専攻した」という事実をへりくだって伝えたいのではないかと思います。

そういった場合、「させていただく」を使用するのは適切ではありません。

2つ目、3つ目の例文も同様です。

「相手に許可をもらい」「そのことで相手に恩恵を感じる」ことを強調したいわけではないなら、「させていただく」を使用するのは不適切です。

「させていただく」を使用するための条件にどれだけ適合するかによって、「させていただく」を使用するのが適切かどうか決まる。

敬語「させていただく」の言い換え表現は?誤用の場合の言い換え

「させていただく」は「いたす」に言い換える

次に、「させていただく」を言い換えた表現をご紹介します。

相手にへりくだって伝えたい場合や、改まった表現を使いたい場合は、丁重語の「いたす」で言い換えるのが適切です。

相手に感謝していることを強調したいわけではなく、謙った表現もしくは改まった表現をしたい場合には、丁重語である「いたす」で言い換えるのが適切です。

※丁重語…謙譲語の一種で、自分の行為やものごとを、話や文章の相手に対して丁重に述べるものであると定義されています。

文化審議会答申”敬語の指針”より

しかし、ここで注意が必要なことがあります。

丁重語「いたす」で言い換える場合、”二重敬語”に注意しなくてはいけません。

例えば、先程の例文の表現を丁重語で言い換えると、「専攻いたしました」「送信いたしました」「拝見いたしました」になります。

しかし、「拝見いたしました」は二重敬語です。

【誤用注意】「させていただく」を「いたす」に言い換えたときは、二重敬語に注意する!

二重敬語とは、一つの語に対して、同じ種類の敬語を2度使ったもののことです。

一般的に、二重敬語は良くないとされています。(ただし、例外もあります。)

「拝見いたしました」という表現は二重敬語にあたります。

「拝見」は「見る」という語の謙譲語、「いたす」は「する」の謙譲語です。

つまり、「拝見いたしました」は、謙譲語が二度繰り返される「二重敬語」になってしまっているのです。

「させていただく」を「いたす」に言い換えたことにより、二重敬語になってしまった場合は、いずれかの語を常語にすることで、文法的に正しい表現にすることができます。

「拝見いたしました」は、「拝見」か「いたす」のいずれかを常語にし、「拝見します」もしくは「確認いたします」のように言い換えれば正しい表現になります。

「させていただく」を「いたす」に言い換えたときには、二重敬語にも注意する。二重敬語になってしまったときは、いずれかの語を常語にする。

まとめ:「させていただく」の多用は誤用の可能性有!言い換え表現は?【敬語】

最後に、今までご説明したことをまとめます。

まとめ:「させていただく」の多用は誤用の可能性有!言い換え表現は?【敬語】

  1. 「させていただく」を使用できるのは、「自分がすることを、相手側又は第三者の許可を受けて行う場合」であり、かつ「そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合」に限定される。
  2. 相手に謙って伝えたいという意図の場合、「いたす」で言い換えるのが適切。
  3. 「させていただく」「いたす」を使用するときは、二重敬語にも注意する。

如何でしたか。

この記事が、少しでも皆さまの理解の助けになれば幸いです。

参考文献

  1. 文化審議会答申(2007)「敬語の指針」(最終閲覧日:2021/12/18)
  2. 蒲谷宏 他(2009)「敬語表現ハンドブック」大修館書店
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