この記事は、相手に伝わりやすい文章にするためのコツを修得するための演習記事です。
今回演習を行う単元は、「修飾語を入れる位置について」です。
トレーニングの難易度について
この記事では、初級〜中上級の方を対象とした演習問題を扱っています。
上級者向けの問題は扱っておりませんので、ご了承ください。
難易度 | 問題のレベル | 対象者 |
★☆☆ | 初級 | 本単元に対して苦手意識のある方や、よく他人から文章について注意を受ける方。 本単元の基本的なところを1から学びたい方にオススメします。 |
★★☆ | 初級〜中級 | 本単元に対して苦手意識はないが、あまり文章力に自信のない方にオススメします。 |
★★★ | 中級〜中上級 | 本単元について十分な基礎知識を持ち合わせているが、更に良い文章を書けるようにしたい!という方にオススメします。 |
【修飾語編】文章力トレーニングその1(難易度★☆☆)
あなたは、友人と散歩しています。暫く歩いていたところ、犬とすれ違いました。
友人に、下記に示す「犬の特徴」を伝えつつ、「犬とすれ違った」ことを伝えたいとします。
犬の特徴
- 大きい
- 男の人が連れていた
今、( ① )男の人が連れていた( ② )犬とすれ違ったね。
この文章の中で、被修飾語となり得る語を全て挙げてください。
修飾語「大きな」を入れる位置は、①・②のどちらが適切でしょうか?
問1の答えは… 男の人・犬です。
問2の答えは… ②です。
今、男の人が連れていた大きな犬とすれ違ったね。
修飾語を入れる位置を考える手順は、以下のとおりです。
- その文で被修飾語となり得る語を考える(問1)
- ①で抽出した語の中から、挿入したい修飾語が修飾し得る語に絞る(問1)
- 修飾語を入れる適切な位置を考える(問2)
問1では、「被修飾語となり得る語」はどれかを考えました。
<被修飾語を探す方法>
被修飾語となり得る語を考えるときには、まず、文を文節で区切ります。
今、|男の人|が|連れていた|犬|と|すれ違ったね。
次に、修飾語が「体言(名詞)」を修飾するものであるのか、「用言(動詞)」を修飾するものであるのかを検討します。
この例で考えると、修飾語「大きな」は、何かの物について説明する表現であるのか、それとも誰かの動作について説明する表現であるのかを考えます。
「大きな」は、「大きな」家 や、「大きな」声 等、”何かの物について説明する表現”ですよね。
つまり、「大きな」は、「体言(名詞)」を修飾するものであることが分かります。
今回は、修飾語が「体言(名詞)」を修飾するものであるため、「体言(名詞)」を探します。
この文章では、「男の人」「犬」が体言にあたります。
したがって、「大きな」の被修飾語となり得る語は、「男の人」と「犬」であることが分かります。
問2では、修飾語「大きな」を入れる位置について考えました。
<修飾語を入れる位置を探す方法>
講義編で解説したとおり、修飾語は必ず被修飾語よりも前に置かれます。
また、修飾語は、「1番最初に登場する、被修飾語となり得る語」を修飾します。
今、( ① )男の人が連れていた( ② )犬とすれ違ったね。
- ①の位置に修飾語を入れた場合…
-
被修飾語として考えられる語は、①より後に出てくる「男の人」「犬」の両方です。
そして、複数の被修飾語が考えられる場合、一般的に「最初に登場する被修飾語となり得る語」が被修飾語となります。
したがって、①に修飾語を入れると、被修飾語は「男の人」となり、「背の高い男の人が連れている、犬」という意味に捉えられてしまいます。
- ②の位置に修飾語を入れた場合…
-
被修飾語は、被修飾語として考えられる語は、②より後に出てくる「犬」です。
被修飾語として考えられるのが一語だけであるため、②の位置に修飾語を入れると、「犬が大きかった」という意味を誤解なく伝えることができます。
以上の理由から、「犬が大きかった」ことを伝えたい場合には、②の位置に「大きな」を入れるのが適切であると言えます。
【修飾語編】文章力トレーニングその2(難易度★★★)
Aさんは今、電話で、明日の会議について打ち合わせをしています。
その会議は、会社の取締役も参加する、とても重要な会議です。
電話を切った後、Aさんの上司から、「今、何の話をしていたの?」と聞かれました。
Aさんは、咄嗟に「今、重要な会議の打ち合わせをしていました。」と答えました。
「今、重要な会議の打ち合わせをしていました。」という発言の問題点は、何でしょう?
この発言の問題点は、修飾語「重要な」の被修飾語が「会議」「打ち合わせ」の両方考えられることです。
前述したとおり、修飾語は「1番最初に登場する、被修飾語となり得る語」を修飾します。
そして、Aさんの発言では、被修飾語「会議」の直前に修飾語「重要な」を入れています。
Aさんの発言は、修飾語を入れる位置に問題はありません。
では、なぜ「重要な」の被修飾語が「会議」「打ち合わせ」の両方考えられるのでしょうか。
その理由は、上司からの質問が「何の話をしていたのか」というものだからです。
上司は「何の話をしていたのか」と質問した以上、「今話していた内容について回答してくれるのだろう」と思いながら話を聞いています。
したがって、「(今の話していた内容が)重要であった」と勘違いしてしまう可能性は十分にあります。
そもそも、「今話していた内容」を聞かれているのだから、「明日の会議」について詳細に説明する必要はなかったのです。
仮に、「何の会議か」特定したいのであれば、「重要な」の代わりに、「明日の」という修飾語を用いるべきです。
上司は、「重要な」会議と言われても、何の会議か特定することは難しいでしょう。
この例のように、不要な修飾語を入れてしまうと文章全体が不明確になるので気をつけましょう。
仕事柄、他人の書いた文章を読む機会が多いのですが、この例のように「本題と違う修飾語を入れてしまっている」文章をよく見かけます。
関係のない修飾語を入れてしまう原因は、恐らく「それが書き手の中で重要なことだから」だと思います。
例えば、今回の例で考えると、Aさんは「明日の会議はとても重要なものだ」という認識が強かったのだと思います。
こうした背景から、咄嗟に「重要な」という不要な修飾語を入れてしまったのだと推測します。
「思いついた順」に書くのではなく、「伝えたいことは何か」を常に意識して文章を書くと、伝わりやすい文章を書けるようになると思います。
「相手に本当に伝えたいことは何か」「相手が聞きたいことは何なのか」を考えて文章を構成することが大切です。
まとめ:【トレーニング編】文章の書き方|修飾語の位置は被修飾語の直前!
最後に、修飾語を入れる位置を決定するポイントをまとめます。
修飾語を入れる位置を決定するポイント
- 修飾語は、被修飾語の近くにおく
- 1つの語に複数の修飾語がかかる場合、被修飾語の遠くに長い修飾語をおき、被修飾語の近くに短い修飾語をおく
- 複数の修飾語を含む文章は、2文に分けた方が良い場合もある。
如何でしたか。
実際に演習してみると、理解していたつもりでも、意外と難しかったりしますよね。
この記事が、少しでも皆さまの理解の助けになれば幸いです。