この記事は、語句の用法についての解説記事です。
今回ご紹介するのは、「大丈夫です」の正しい使い方についてです。
この記事で解決できるお悩み
- 「大丈夫です」を使用しても問題ないシーンを知りたい
- 「大丈夫です」を使用しないほうが良いシーンを知りたい
- 目上の人に「大丈夫です」を使用すると失礼にあたるのか知りたい
- 「大丈夫です」の敬語表現について知りたい
- 「大丈夫です」を言い換えた表現を知りたい
「大丈夫です」を言い換える必要があるシーンとは?
「大丈夫です」の正しい意味 〜断りたいときに使用するのは誤った用法です〜
「大丈夫」の意味は、以下のように定義されています。
①危険や損失・失敗を招くおそれが無いと断定できる状態だ。
②良い結果になることを請け合う(信じて疑わない)様子。
新明解国語辞典 第6版
あれ? 断りたいときに「大丈夫です」を使うけど、この意味は辞書に載ってないの?
ここで、デジタル大辞泉で「大丈夫」の意味を確認すると、”補説”として以下のような説明が記載されています。
[補説]近年、形容動詞の「大丈夫」を、必要または不要、可または不可、諾または否の意で相手に問いかける、あるいは答える用法が増えている。
デジタル大辞林
言葉は日々変化していくので、今後「必要または不要、可または不可、諾または否の意で相手に問いかける、あるいは答える用法
」が辞書に掲載されるようになるかもしれません。
しかし、現時点ではまだ”補説”に掲載されているだけなので、こうしたシーンで「なるほど」を使用するのは誤用であるといえます。
「大丈夫です」を必要または不要、可または不可、諾または否の意
で用いるのは誤りです。
「大丈夫です」をそのまま使っても問題ない場合と、言い換えたほうが良い場合について
大辞林の補説に掲載されている以上、日常会話において「必要または不要」の意で「大丈夫です」を使用するのは問題ないでしょう。
しかし、「可とも不可とも受け取れる」文脈で「大丈夫です」を使用するのはあまり推奨しません。相手が混乱します。
また、誤用である以上、目上の人にも使用しない方が良いです。
もとより、ビジネスシーンでは、常に「論理的に話す」ことが求められます。
そのような場で、どちらとも捉えられるような曖昧な表現を使用することは望ましくありません。
こうした理由からも、「大丈夫です」を目上の人に使用するのは避けるべきであるといえます。
大丈夫ですを使用しない方が良いシーン… ①可とも不可とも捉えられるシーン ②目上の人と話すとき ③ビジネスシーン
ビジネスシーンOK、上司にも使えます!状況別「大丈夫です」の言い換え表現5選
「大丈夫です」は多義的な言葉です。
したがって、「大丈夫です」の言い換えの表現は、「どのような状況で使用したいのか」によって変わってきます。
以下では、状況別に「大丈夫です」の敬語表現・言い換え表現を5つご紹介します。
「大丈夫です」の言い換え案…「問題ない」ことを伝えたいとき
「問題ない」ことを伝えたくて「大丈夫」を使用したいときに使える、言い換えの表現を2つご紹介します。
「大丈夫です」の言い換えその1:「問題ありません(ございません)」
「問題ない」ことを伝えたい時は、そのまま「問題ありません(ございません)」を使用することをオススメします。
「ない」の丁寧語である「ございません」を組み合わせた語であるため、目上の人にも問題なく使用できます。
しかし、「問題ない」が転じた「結構です」という言葉には、「きっぱりと断る」という意味もあります。
したがって、場合によっては「上から目線である」と感じる人がいる可能性があります。(参考:マイナビウーマン)
こうした可能性を考慮すると、目上の人に使用する場合には、”言い換えその2”でご紹介する「差し支えありません」を使用するのが無難でしょう。
「大丈夫です」の言い換えその2:「差し支えありません(ございません)」「支障ありません(ございません)」
「問題ない」よりもに丁寧に「問題ない」ことを伝えたいときには、「差し支えありません」「支障ありません」を使用することを推奨します。
「差し支えない」は、何かをするのに都合の悪い事情がないという意味の言葉です。
「差し支えない」は、「都合が悪くない」ということを伝える意味のみを持つため、「上から目線」という印象も与えません。
「支障ない」も「差し支えない」の類語であるため、「差し支えない」同様に、相手に「上から目線」という印象を与えません。
「大丈夫です」の言い換え案…相手の気遣いに感謝しつつ断りたいとき
相手の気遣いに感謝しつつ断りたくて「大丈夫」を使用したいときに使える言い換え表現をご紹介します。
「大丈夫です」の言い換えその3:「お気持ちは有り難いですが、遠慮しておきます」
「お気持ちは有り難いですが…」から始めると、相手からの気遣いに感謝するという意を込めることができます。
こちらも丁寧な言い回しであるため、目上の人にも問題なく使用できます。
また、断る理由を付け加えると、さらに丁寧な言い回しになるでしょう。
例えば、「お気持ちは有り難いですが、お手を煩わせるわけにはいきませんので、遠慮しておきます。」といったように、断る理由を追加すると、さらに丁寧な言い回しになります。
「大丈夫です」の言い換え案…端的に断りたいとき
端的に断りたくて「大丈夫」を使用するときとは、例えば以下のような場合です。
このような場合に使える言い換え表現をご紹介します。
「大丈夫です」の言い換えその4:「結構です」「不要です」
混雑しているレジや、急いでいるときなどに、「お気持ちは有り難いですが、… 」といちいち説明するのは大変ですよね。
そういう時は、「結構です」「不要です」と端的に言い換えるのが良いです。
ただし、「結構です」は、「きっぱりと断る」という意味を持つため、少しキツい印象を与える可能性があります。
余裕があれば、「結構です。ありがとうございます。」と、お礼の言葉を添えると柔らかい印象になると思います。
「大丈夫です」の言い換え案…「気にしないでください」と伝えたいとき
「気にしないでください」と伝えたくて「大丈夫」を使用したいときに使える言い換え表現をご紹介します。
「大丈夫です」の言い換えその5:「お気になさらないでください」「お気に留められませんように」
「気にしないでください」の尊敬語である「お気になさらないでください」は、目上の人にも使用することができます。
偶に「お気になさらず」を使用する人がいますが、少しカジュアルな響きですので、目上の人に使用するときには「お気になさらないでください」を使用するのが無難かと思います。
また、同じような意味を持つ「お気に留められませんように」と言い換えるのも良いでしょう。
「お気に留められませんようにお願い申し上げます」とすると、更に丁寧な表現になります。
「お気になさらないでください」「お気に留められませんように」のどちらを使用する場合も、「気にしないで」と伝えたい理由を添えると、更に丁寧です。
例えば、上記の例ですと、「お気になさらないでください。こちらこそ、お忙しいところ、ご無理をお願いして申し訳ありません。」といったように、「気にしないで」と伝えたい理由を添えると良いでしょう。
まとめ:「大丈夫です」は誤用に注意!上司にも使える状況別の言い換え表現5選
最後に、今までご説明したことをまとめます。
まとめ:「大丈夫です」は誤用に注意!上司にも使える状況別の言い換え表現5選
- 「大丈夫です」を「<必要または不要」の意味で使用するのは誤用である。
- 目上の人に対してや、ビジネスシーンにおいて、「大丈夫です」を使用するのは避けたほうが良い。
- 「大丈夫です」の言い換え表現は、使用したい状況によって変化する。
- 問題ないと伝えたいときの言い換え表現…問題ありません、差し支えありません、支障ありません
- 断りたいときの言い換え表現…結構です、不要です、お気持ちは有り難いですが遠慮します
- 気にしないでと伝えたいときの言い換え表現…お気になさらないでください、お気に留められませんように
如何でしたか。
この記事が、少しでも皆さまの理解の助けになれば幸いです。
- 山田忠雄ほか(2009)「新明解国語辞典(第6版)」三省堂
- 吉田裕子(2018)「大人の語彙力使い分け辞典」永岡書店
- マイナビウーマン「「問題ございません」は正しい敬語? 使い方や例文・言い換え表現を解説」2021.01.28更新(最終確認日:2022/1/10)